「86’d(エイティシックスド)」は、「追い出された」「排除された」「もう取り扱わない」という意味の英語スラング。もともとはアメリカのレストラン・バー業界の符牒(スタッフ間の隠語)で、そこから一般のスラングに飛び火した経緯がある。
「お客さんを店から追い出す」「メニューが売り切れる」「不良品を在庫から外す」「人間関係を切る」──このへんを全部1単語で表せる便利ワードで、現代英語でも普通に通じる。元ネタは1930〜40年代のニューヨークの飲食業界、というのが今の通説や。
86’d の意味と使い方
「86」を動詞として使うのが基本。「to 86 someone / something」で「〜を排除する/消す/切る」。過去形にすると「got 86’d」「was 86’d」になり、これが「追放された」「排除された」と訳される。
- I got 86’d from the bar last night.(昨夜あのバーから叩き出された)
- The bouncer 86’d him for starting a fight.(喧嘩を始めたあいつを用心棒が追い出した)
- We’re 86’d on the salmon, sorry.(サーモン売り切れです、すんません)── 飲食業の現場英語
- That idea got 86’d in the meeting.(あの案は会議でボツになった)── ビジネス文脈
- She 86’d him after he forgot her birthday.(誕生日忘れた件で彼女は彼をぶった切った)── 人間関係
意味の幅、めっちゃ広い。「物理的に追い出す」から「メニューから消す」「会議で否決する」「友達切る」まで全部いけるオールラウンダーなスラング。日本語の「切る」「干す」「飛ばす」「外す」あたりを1単語に圧縮した感じやと思ってもらえば近い。
なんで「86」?──由来の本命説
「なぜ 86 という数字なのか」については複数のエピソードが流通しとるんやけど、Merriam-Webster などの辞書系や英語スラング辞典で最も有力とされてるのが、ニューヨーク・グリニッジ・ヴィレッジにあった伝説のバー「Chumley’s」(住所:86 Bedford Street)に由来する説。
禁酒法時代(1920〜33年)の Chumley’s は、警察のガサ入れの通報が来ると「86 する!」と店内に叫び、客を 86 Bedford Street 側のドアから逃がしていた、という話。これが「86=店から出す/追い出す」の語源になったというストーリーで、地元の郷土史や Chumley’s 自身が長年これを公式の由来として語り続けてる。
これと並ぶ別説として、1930〜40年代のアメリカ飲食店スタッフが使ってた数字コード(隠語)で「86=もう無い/提供しない」を意味したというやつ。当時の現場では他にも「87=混雑中」「99=マネージャー来てる」みたいな数字暗号が大量に使われとった。Walter Winchell(当時の超有名コラムニスト)が1933年に「86=食堂スラングで『in stockしていない』」と紙面で紹介した記録が残っとって、これが活字に残った最古級のソース。
つまり「Chumley’s 説」と「飲食店符牒説」、両方ともリアルに記録が残っとって、どちらかが完全正解とは言いきれん。ただ、どっちにしても 1930〜40年代のニューヨーク〜アメリカ東海岸の飲食・接客現場で生まれた業界スラング という大枠の起源は揺らがない、と思ってOK。
使う時のニュアンス
「86’d」のキモは、「もう戻れない/復活しない」感。一時的に席外したくらいでは使わん。「あの店から二度と入れない」「あのメニューはもう作らない」「あいつとはもう関わらない」──こういう “終わり感” がついて回る言葉や。
ニュアンス的に近い英語表現は:
- kicked out(叩き出された)── 物理的に追い出された場面でいちばん近い
- banned(出禁になった)── 二度と入れない感を強調するときはこっち
- cut off(縁を切られた)── 人間関係の文脈
- sold out / out of stock(在庫切れ)── 飲食業の文脈
- scrapped / canned(ボツになった)── アイデアや計画の否決
これら全部の代わりに「86’d」一発で済むってのが、現場で愛されてる理由。短くて、ちょっと粋で、業界臭がする。アメリカのドラマや映画でバーテンや店主が「Get him 86’d!」って怒鳴るシーン、たぶん一度は耳にしたことあるはずや。
まとめ
- 86’d の意味:追い出された/排除された/取り扱いをやめた/関係を切られた
- 動詞 “to 86”:〜を排除する/切る/消す(過去形が “86’d”)
- 由来:1930〜40年代のNY飲食業界の符牒。Chumley’s(86 Bedford St.)説と、数字コード説が両輪
- 使える場面:店から客を追い出す/メニュー切れ/会議でボツ/人間関係の縁切り、全部いける
- ニュアンス:一度切られたら戻れない、という “終わり感” がポイント
たかが「86」、されど「86」。たった2桁の数字が90年近く生き残って、今でもアメリカ中の飲食店で日常的に使われとる。バーで「You’re 86’d!」って言われたら諦めて帰れ、二度と入れんから。



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